第101号 2015年11月発行
「日本の弓術」

こんにちは、失礼します。
生搾りどくだみ青汁酒・十黒梅(じゅっこくばい)の食援隊、細川泰伸です。
いつもいつも十黒梅をご愛飲頂きまして本当にありがとうございます。
またこの度は、手作り新聞「イキイキ元気倶楽部通信」を
お手に取って頂きまして心より感謝申し上げます。

確か、まだ残暑厳しい9月のはじめ頃だったと記憶しております。
私の愛聴番組(ラジオ放送)の一つ、文化放送の「武田鉄矢・今朝の三枚おろし」にて
「弓と禅(オイゲン・ヘルゲル著)」という本が紹介されました。

著者はドイツ人の哲学者で、大正13年に東北帝国大学に招かれて哲学を教えるべく来日、
日本滞在期間に、日本文化を理解しようと、弓道を学び始める。
日本人と西洋人の考え方の違い、禅の精神の理解に苦しみながら、弓道に励むストーリーです。

私は、この話にすごく興味を持ち、すぐに本を取り寄せるべく、
手元のスマートフォンで検索!(今は、本当に便利になりました)
ところがっ!私のような方がたくさんおられたようで、「在庫なし」のマークがっ!残念無念!

そうなると、どうしても読みたくなってしまい、しばらく間をおけば、もしかして再販されるかも?
と思い、10月中旬に、改めてスマートフォンで検索! するとっ!
「弓と禅」は相変わらず「在庫なし」でしたが、
同じ著者で「日本の弓術」という本は「在庫あり」のマークが!
説明文を読んでみると、「弓と禅」の内容と重複しているところが多いということでしたので、
すぐに注文をしました。

届いて、すぐに読み始めまして、、、この本は、私にとりまして、良!良!良!の良書です!
日本人に生まれて本当に良かった!日本は、やっぱりすごくいい所だ!
日本文化・日本精神、すばらしい!と
身長173cm・体重74kg、頭の髪の毛の毛先から、足の爪の先まで、
体全てで深く深く深く感じ入りました。

弓道はじめ、柔道・剣道・空手道等の武道を極めた達人という存在は、
とうてい人間業では考えられいような技を身につけ、その技は、どうしてそのような事ができるか
科学的にも実体的にもとても説明できず、何か目に見えないとても理解できない不思議な力、
到底説明できない何かの力を味方にしているようにも思えたりします。

さらに日本では、武道はただのスポーツではなく、
筋肉をつけるもの、技を身につけるものだけでもなく
精神や心を鍛えるもの、人間自身を鍛えるもの、
人格を育てるもの、等という考え方もあろうかと思います。

その日本の武道に、科学的な理論武装したドイツ人の哲学者が足を踏み入れるのです。

ヘルゲル氏は弓道の師匠に
「弓を腕の力で引いてはいけない、心で引くこと」「呼吸は丹田でしなさい」
「あなたがまったく無になる。ということが、ひとりでに起これば、
その時あなたは正しい射方ができるようになる」
「的を狙ってはいけない、弓を引いて、矢が離れるまで待っていなさい、
他の事はすべて成るがままにしておくのです。」 と教えられたそうです。

私ども日本人でしたら、師匠の教えには絶対服従でしょう。
境地に達するとそのようなイメージで射る事ができるのか?
とにかく、師匠のいうようなイメージで稽古に励もうと、
「はい、わかりました」と肯定的に受け入れる事でしょう。

ところが、主人公はドイツ人の哲学者のヘルゲル氏です。相当困惑したようです。
師匠の教えに、真正面から受け入れる事ができません。
「腕の力を入れなければ、弓はひけないじゃないか」
「呼吸は肺でするものだ、生理的に無理じゃないか」
「私が無になったら、いったい誰が弓を引いて矢をいるか」
「的を狙わなければ、命中しないじゃないか」 確かに理屈で考えれば、その通りなのです。
否定的に受け入れ、師匠に質問ばかりして、日々葛藤の毎日を送ります。

そしてヨーロッパ的な論理・思考・知見・科学的根拠等、実在するもので師匠の教えを解剖しよう
どうやれば、的に命中するか理論的に説明できるようにしようと挑むのです。

その姿を見た師匠は、こう教えます。
「あなたが技巧家になるつもりだったら、私というこの精神的な弓術の先生は、
実際に必要がなくなるでしょう。」
この教え、精神論が大好きな私にとりまして、胸がキュンっ!となりました。

ところが、ヘルゲル氏は、どうしても師匠の教えが身に入りません。そこでっ!ここからが凄い
師匠は、ヘルゲル氏を夜の9時頃、自宅の道場に招きいれ、編針のように細長い蚊取線香に火を灯し、
60m先の的の前の砂場に立て、自分の弓と2本の矢を執った。
つまり、辺りは真っ暗闇、光は60m先に微かに光る蚊取線香だけ、
師匠は、第一の矢を放ち、続いて第二の矢を放った。

矢を見ると、第一の矢は、的の真ん中に見事に命中、
第二の矢は、第一の矢の筈に当たり、矢を二つに割いて的の真ん中に命中!
師匠:「二本目の矢はどう見られるか?これは私から出たものでもなければ、私が中てたのでもない。
それでもまだあなたは、狙わずには中てられぬと言い張られるのか」
本のページをめくる時間が止まりました。弓道の真髄に少し触れたような気がしました。

そこから、ヘルゲル氏は師の教えに疑う事なく問う事なく、稽古に励みます。
師匠は稽古ごとに、弓道が術ではなく、精神修養の手段であり、悟道の方法である
「弓術」ではなく「弓道」であると説きます。
当てようと思わない射、当てようとしない離れ、を説きます。
百発百中は凡射、百発成功が聖射、目に見えない正しい心の体得とも説きます。
無我の境地に入り、宇宙と一体となるよう説きます。

この手の話は、個人的に大好きです。
書店にいけば、「すぐに成功できる方法」「簡単に成果を出すコツ」などのハウツウ本が並び
メールをチェックすれば「成果が上がる文章の書き方」
「売上が上がるテクニック」というメールが飛び込んできます。
「術」や「テクニック」で簡単に成果をだそうとする考え方です。

確かに技術的な「術」や「テクニック」は大切かもしれませんが、仏作って魂入れず、
品物よりも売り方や外装に力のウエイトを置くのはどうかと思うからです。
私も消費者の一人です。まじめな商品作りをされている方から買いたいと思うのです。

的を射るテクニックを稽古するのではなく、矢を放つ心を鍛錬するというのは、
私も常に心掛けたい、いや心掛けなければならないと、心に感じました。

本のページを閉じ、改めて良書に巡り合えた事への喜びと
紹介して頂いた武田鉄也氏に、そして著者オイゲン・ヘルゲル氏に感謝の気持ちで一杯です。

私も皆様に、十黒梅に巡り合えて良かったと思って頂けるよう、
どくだみの栽培、搾り加工、酒造、販売まで、社員全員で皆様のお役に立てるよう、
心を鍛えるよう頑張って参ります。

今年もいよいよ、残り2ヶ月を切りました。季節は、寒い冬に向けて駆け足の様子です。
お風邪などお召しにならぬよう、体調を崩されませんよう
「うがい、手洗い、十黒梅(じゅっこくばい)」
健康管理には、十分にお気をつけて、お過ごし下さいませ。

それでは、失礼します。

細川 泰伸