第9号 2008年3月発行
「久しぶりに心がジジジィィィ~~~ンとなる本を読みました。」

こんにちは、失礼します。
生搾りどくだみ青汁酒・十黒梅(じゅっこいばい)の食援隊、細川泰伸です。
いつもいつも、十黒梅(じゅっこくばい)をご愛飲頂きまして、本当にありがとうございます。

先日、久しぶりに心がジジジィィィ~~~ンとなる
本を読みました。
その本は「ビゴのフランスパン物語」という本です。

この本を読むにあたり
なぜ、読む気になったのか、なぜ、選んだのかといいますと
理由は、3つあります。

まず、1つ目は
知人の紹介です。その方はいつも私にすばらしい本をご紹介くださり
今回も、この方の推薦なら間違いないと感じました。

そして、2つ目は
元来、私は食いしん坊で食べることが大好きです。
食の道一筋でずっと来たのも、好きだったからだと思います。
ビゴさんが指導した「ドンク」のフランスパンを初めて食べた時
パンの皮が、カチカチで最初はとても食べれなかったのですが
口の中で何回も噛んでいると、なんとも言えない旨みが広がり
それまで私が食べてきたパンの世界を一新させる程の強烈な力があり
すっかりファンになってしまっていました。
そのビゴさんのフランスパンの秘密を少しでも垣間見れれば・・・
そんな思いがありました。

最後に3つ目は
ビゴさんは、日本にフランスパンを広めた第一人者の方です。
今までなかったものをゼロから広めるという意味では
今、私どもが皆様にお届けしております「十黒梅」と
どこか、共通しているところがあるのではないか?
そう感じたからです。

本を開き、読み進めていくと
そこに書かれているビゴさんは
一言でいえば「下町のがんこおやじ」というか
華やかという言葉とは程遠い
地道で頑ななビゴさんがありました。

深夜12時から、ただひたすら、
お客様が喜び、自分が納得のできるパンを
作り続けています。

ビゴさんのパンは、まるで自分の子供を
生み育てるようなパン作りの印象をうけました。

ビゴさんのプランスパンの材料は
何かものがあるかといえば
全くそうではなく、水・小麦粉・塩・酵母のこの4つだけです。

そして、特別なレシピやマニュアルがあるかと思えば
これまたそうではなく、その日その日の状態で
練り具合を目で確かめ、指で確かめ、香りで確かめ
音で確かめ、味で確かめながら作っていくものでした。

それは、パンは、材料を醗酵させ、焼き上げて作ります。
その日の天候、温度や湿度によって
醗酵の具合が変わってきます。

マニュアル的に、分量や混ぜ合わせる時間・力を同じにしては
その日のそれらの自然の状態によって、
醗酵が進まなかったり、逆に進みすぎてパンにならないのです。

ですから、五感を研ぎ澄ませ
それら自然の状態の中で、材料をベストの状態に合わせる事が
おいしいパン作りには必要になってくるのだそうです。

本を読み進めいくと、

ビゴさんは、掃除を徹底する
ビゴさんは、材料を無駄にしない
ビゴさんは、決して手を抜かない
ビゴさんは、頑なフランスパンの文化を守り続けながらも
日本の文化も容認し、パンに活かしている
ビゴさんは、陽気な関西弁でユーモラスに誰にでも話しかける
という人物像が伺えました。

そして、読み終わった時に
なぜ、ビゴさんのフランスパンが日本中に広まったのか?
なぜ、ビゴさんを日本のパン職人が慕ったのか?
その答えを私なりに考えると

マニュアルに頼らず、五感を大切にする製法にしかり
掃除の徹底や、材料を無駄にしないところ、手抜きをしない
文化を大切にするところ、ユーモラスなところ

すべては、お客様においしく食べて頂く「思いやり」
物や材料に対する「思いやり」
一緒に働く人への「思いやり」が
大きなコアの部分になっているように強く感じました。

私たちの身の回りを見渡したとき
中には、マニュアル至上主義的で、どこか「思いやり」の気持ちが
欠けている事も一部に見受けられるような気がします。

私の経験でも、そのような事が過去にありました。
それは、学生学時代のステーキ屋さんでのアルバイトの事です。

アルバイトの初日そうそう、
私は全く予想をしていなかった一言、
「細川君、肉を焼いて」と言われたのです。

私は、正直驚きました。
それまで、全く調理経験はありませんでしたので
料理を運んだり、皿洗いをする事が
アルバイト先での私が担当する仕事だと思ってました。

目を丸して驚く私に、
「ここにタイマーがあるでしょ
肉を鉄板の上に載せて、タイマーを押すと
数分後に一回目のタイマーがピピッと鳴るから
そしたら、肉をひっくり返し裏面を焼く
それから、数分後にもう一回タイマーが鳴ったら完了
お皿に、肉を移して、ソースをかけて出来上がり
ねっ、簡単でしょ、ここにそのマニュアルが書いてるから
読みながら焼いてみて」と、
先輩は、気のない声で淡々と教えてくれました。

私は何か違う気がして、お店のオーナーにこの事を相談すると
「マニュアル化する事で誰でも焼けるようになる
誰でも焼ける事で、賃金の高い職人さんでなくてもよくなるし
職人さんごとの味に頼らなくてよくなり、いつも同じ味になる
だから、お客様に、いつも安くステーキをご提供できる」と
いう返事が返ってきました。

確かに、お客様に安価に安定した商品をご提供することは
お客様に、大きなメリットがあります。
しかし、私は心の中で何か違和感を感じていました。

今思うと、それは、
「食べる人を思いやる気持ちが大事」
ではないだろうか思うです。

単なるアルバイトでも、いくら資格をもった職人さんでも
食べる人への思いやりがなければ、きっと、それはいいものではない、
おいしいものではないと思うのです。

それを考えると、お母さんの料理がなぜおいしいのか?
それは、家族を思う愛情たっぷりだからではないでしょうか?

近年、食品業界で不祥事が相次いでいます。
内情はよく理解できていませんが
何か、「相手を思いやる気持ち」が
欠けている事が原因のように感じています。

十黒梅は、「家族に食べさせたい、飲ませたい」を
商品開発の大きな柱にして出来上がりました。

ビゴさんの思いとどこか通じているところがあるような気がして
少し嬉しくなると同時に、今後の商品開発も、この思いを大切にしたいと
「ビゴさんのフランスパン物語」を読んで改めて強く感じました。

今回、すばらしい本に巡り合えて、本当に良かったです。

それでは、失礼します。

細川 泰伸