第76号 2013年10月発行
「道(三河湾チャリティー100km歩け歩け大会の思い出)前編」

こんにちは、失礼します。
生搾りどくだみ青汁酒・十黒梅(じゅっこくばい)の食援隊、細川泰伸です。
いつもいつも十黒梅をご愛飲頂きまして本当にありがとうございます。
またこの度は、手作り新聞「イキイキ元気倶楽部通信」を
お手に取って頂きまして心より感謝申し上げます。

こちら高知は9月末より、日中は、まだまだ残暑厳しく暑い毎日が続いておりますが、
朝夕はめっきりと涼しさを覚え、秋の気配を感じるようになりました。
今年はフル回転・トップギアで大奮闘したエアコン機器も、
ようやく束の間の休憩タイムがきたようです。

運動不足解消にと、不定期的に通っている近くの県営プールは、
夏の冷水から冬の温水へと水替えが完了し、
秋そして冬への準備は万端のようです。

これから徐々に秋が深まり、季節は移り変わっていく事でしょう。
部屋の温度調整や服装の選び方が難しい季節です。
体調管理には十分にお気をつけくださいませ。

そして、10月になるとどうしても忘れられない思い出があります。
それは数年前、愛知県のある会社様の主催イベント
「三河湾チャリティー100km歩け歩け大会」に参加した時の事です。

今回は、その時にまとめたものご紹介させて頂きます。

■ 道 ■ (前編)

ゴーゴーと雨が降りしきる中、一人ぽつんと歩く私、
あたりは真っ暗で、時折横を通りすぎる車にドロをはねられ
今にもそこから逃げ出しそうな心境に駆り立てれました。

ふと腕時計をみると、22:05

ちょうどその時、私のポケットの中の携帯電話に着信のサインが・・・

電話を取ると、向こうには私を気遣って心配で電話をくれた妻の声、
2~3分、足の痛みや、雨の状況などを話し、電話を切ろうと思った時
電話の向こうで、3歳の娘が出てきて一言

娘:「ぱぱぁ~、がんばってよぉ~」

目の前が涙という洪水で溢れて・・・
失いそうになっていた自分をしっかり取り戻しました。

10月30日、AM7:00にスタートした
第9回、三河湾チャリティー100km歩け歩け大会
この大会は、その名の通り「チャリティー」で参加費は、福祉施設に寄付されます。

そして、今年は新潟中越地震の被災地にも、
一部寄付されることが決まり、参加者から拍手が沸き起こりました。

もともとは、社員教育の一環ではじまったそうなのですが、
回を重ねるごとに、人が人を呼び
今年は、350人の今まで一番の参加者でスタートしました。

実は昨年、私が大変お世話になっている方が、この大会に参加して

「本物になれる」「自分が好きになる」
「絶対、一生に一回は歩いた方がいい」などなど
熱い熱いメッセージを頂いていました。

それで、昨年はこちら高知で、高知大学主催の100km歩く大会に参加したのですが
無惨にも「50km」でリタイア
今年は、何とか昨年よりも・・・と臨んで迎えた今大会でした。

スタートの時、主催者の社長様の挨拶で
「今日は雨が降ってます。最悪のコンディションです。
しかし、これを最悪と思うのか、いい試練だ、最高と思うのか、
それは皆様の心次第です。」

という言葉に、胸を打たれ、空を見上げ、もう後戻りできない
これから始まる数時間のチャレンジへの決心をしました。
最初は、知っている方と仲良く
仕事の話や、最近の話についての話に花を咲かせ意気揚々と足を滑らします。

しかし、歩くスピードを人に合わせるのは本当に難しく
最初はみんなで合わせていたのが、だんだんバラバラになってきました。
私は昨年、高知の大会で、最初からスピードを上げて、
それが原因で足がもたずリタイア
その教訓があったので、ゆっくりペースで一歩一歩前に運びます。

それから今回、靴を買う時に、買ったお店で教えて頂いた
「マサイ族の歩き方」をイメージして歩きました。

その歩き方は、言葉にすると非常に難しいのですが
上体を動かさず、地面からの衝撃を膝で吸収するのではなく
なるべく腰で吸収するように歩くのだそうです。

マサイ族の人は、大きな水瓶を頭に乗せて、毎日、毎日、何キロもあるいているのに
誰一人として、足腰を痛めた人がいないそうで、
最近は、医学やスポーツ学等から脚光を浴びているそうなのです。

ちょっと考えてみたら、マラソンの野口選手や高橋選手の走っているフォームは
ほとんど上体にブレがありませんし、競歩の選手もそんな感じです。

マサイ族の歩き方をマスターするのには、かなりの時間が要るとの事でしたので
今回は、上体を上下させない事、それから競歩の選手のような歩き方をイメージして
それを実践してみました。

しばらくそのペースで歩いていると左手の方に、
39キロ地点のチェックポイントが見えてきました。
そこには、今回同じ高知から参加した私の高校の大先輩でもあります
Y先輩の姿がありました。

私:「先輩!えらい早かったっすね~、大丈夫っすか~」の問いかけに
先輩:「膝の裏がいかん!」
私:「どうしますぅ?」
先輩:「行く」

先輩には、日頃から本当にお世話になっていて、いつも適切なアドバイスを頂き
今の私があるのも先輩のお陰です。
何とか、一緒にゴールをしたい!そんな気持ちでいっぱいになり
ひとまず、次の50キロ地点を二人で目指します。

しかし、朝からの雨はだんだん強くなってきて
大きな車が横を通ると、否応もなくドロがはねてきます。

前に歩く気持ちがグラグラと揺らぐのが、足の調子のいい私でもひしひしと感じます。
足を痛めた先輩にはよっぽどの事だと思いました。
先輩:「オレはかまんき、先に行けやぁ~」
私:「50キロまでは一緒に行きましょう」

たった、「歩く」
たったそれだけ

なのに、どうしてこんなに一緒に歩く事が難しいのでしょう

もし、これを会社に、そして家族に置き換えた時、私は、嫌なことから目をそむけ
うわべだけで、一緒にやってきたかもしれない事に胸を痛めました。

今までの生活をやり直す意味でも、何とか、先輩と50キロまで行くんだ!
その一心で、一緒に足を進めます。
一緒に歩き初めて約2時間、陽は西に沈み、辺りは真っ暗になってきました。
建物の灯りと、横を通り過ぎる車の灯りだけ頼りに歩きます。

しばらくすると、右手にコンビニが見えてきました。
私:「先輩、あそこまで頑張りましょう」
コンビニに着くと痛い足を押さえる先輩、疲労困憊の顔が隠せません
一緒に食べる「おでん」の味が胸にしみます。

足の痛さを忘れさそうと、高校のバカ話や仕事の話にしばらく花を咲かせます。
私:「さぁ~、歩きましょう!」といったその時に
先輩:「ありがとう、おまんのお陰でここまでこれた
おまんがおらんかったら、39キロでやめちょった
ここから先は、自分でゆっくり行くき、おまんは先に行け」

今回の大会にはタイムリミットがあって、時間内にゴールしなければなりません。
それを気遣ってかの先輩の一言、一緒に行きたい気持ちでいっぱいでしたが、
初めて聞く「ありがとう」という先輩の声に

私:「絶対、50キロまで来て下さいよ」
先輩:「よっしゃぁ~、分った!」
涙いっぱいの約束を交わし、一人、雨の中を歩きはじめました。

先輩と別れ、数十分、大きな川の橋を渡り、左手に灯りが見えたとき
向こうから「がんばれぇ~」の大きな声が聞こえてきました。
そうです、ちょうど半分の50キロのチェックポイントです。
私の中で、目標にしていた地点が目の前です。

「がんばれぇ~」の声に勇気をもらい、一歩一歩足を運び、その地点へと・・・
たどりつくとそこは、足を痛めた人のうめき声がそこら中から聞こえてきました。

ボランティアで参加されたお世話係りの方が、一生懸命マッサージをする姿をみると
涙がグッと込み上げてきました。
自分の足を触ってみると、痛いには確かに痛いですが
不思議な事に、昨年、50キロでリタイアした時のような激痛はありません。

もしかしたら、今回はチャンスかもしれない、恐るべしマサイ族!そんな思いを胸に
次の目標に向かって歩き始めました。

次の目標は、81キロのチェックポイント!

そこには、昨年見事100キロを完歩して、今回、サポートに参加していただいている
多く知り合いの方が待っていらっしゃるところ

そして、そこには、蟹屋さんが、
無償で提供してくれた「カニ汁」が待っているところ

前日に、蟹屋さんから「おいしいカニ汁をみんなで食べてね!」と言われましたので、
それを楽しみにしておりました。
雨の中を一歩一歩、みんなの顔とカニ汁を目指します。

それはスタートして、ちょうど12時間、午後7時のことでした。

そこからしばらく歩いた60キロ地点、50キロでは大丈夫だった足も
さすがにギシギシと痛みを感じるようになってきました。

進んでいる道は、市街地を抜け、まわりには、建物が少なくなり
灯りも同時に少なくなってきました。

ふと気付けば
前は・・・誰もいません、
後ろは・・・誰もいません、
まわりに誰一人もいない事に気付きました。

今回の道は、初めて通る道、もし、間違っていたらどうしよう
自分の居場所が分らなくなり、不安と寂しさでいっぱいになりました。

暗闇の中に一人でいる私・・・

激しく吹きつける雨、そして暗闇、そして遠くの雷の声、不気味な光り
聞こえてくるのは、時折横を通る車の音と
自分の足音、右手にしっかりと持った「杖」が地面をつく音
さっきまでは、車が横を通るとドロをはねらるので、すごく不快な思いでしたが

それが、次第に、だれか横にいて欲しい
早く車が横を通って欲しい、そんな気持ちになりました。
しかし、そんな気持ちと裏腹に現実はそうではありません。
コースは市街地を抜けていきますし、時間が時間です。
車の数は当たり前のように少なくなっています。
だんだん、だんだん、寂しくなり、涙が込み上げてきてきました。
それから、痛みと不安の思いからか

自分がどうしてこの世に生まれてきたのだろう?
自分は何のために生まれてきたのだろう?
どうして、この仕事をしているんだろう?

そんな思いがふつふつと沸いてきました。

もうここから逃げ出して逃げ出したくて、何度も何度もリタイアを考えました。

また挫折すのか?
また去年のように諦めるのか?

今まで、いつもいろんな言い訳をして諦めてきた自分
そんな自分に別れを告げたかったのも、今回参加した理由の1つ

たった、歩く事!それさえもできそうにない自分
自分が自分を本当に情けなくなりました。

そんな時、私のポケットにあった携帯電話に妻から電話が一本

暗闇の中にポツンといた私に
妻の声は本当に救いでした。

妻:「どう?雨は?どこまで歩いた?足は大丈夫?寒うないぃ?」
気遣ってくれる声に、「うん、うん、大丈夫」と答える私

電話の向こうが、静かになったので、
話は終わったのかと思い、電話を切ろうとした時

電話口から
娘:「ぱぱぁ~、がんばってよぉ~」
3歳の娘が・・・

目の前が涙という洪水で溢れて・・・
失いそうになっていた自分をしっかり取り戻しました。

そうです。この子たちの笑顔を守るのは私の役目
私がやらないで誰がするのでしょうか?
まさか他人の誰かが、ウチの子供を幸せにするのでしょうか?

いや違います!

家族の幸せを守るのは私の役目
私の存在意義は、家族の笑顔を守る事
もし、今回、100kmを歩ききったら
どんなに娘や息子が喜んでくれるのか、
どんなに嬉しい顔をしてくれるのか・・・

まだ見ぬゴールの向こうに、しっかりと、はっきりと
娘と息子の喜ぶ顔が見えました。

そして順番に、妻、社員全員の顔が、ゴールの向こうに見えた瞬間!

「ハッ」と
自分の存在意義に気付きました。
私の存在は、家族、社員を幸せにする事

その時こそが、不安が勇気へと、
「カチッ」とスイッチが切り替わった瞬間でした。



後編へと続く。。。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
また、次号(11月発行)にてお付き合いくださいませ。

それでは、失礼いたします。

細川 泰伸